どうも桑田です。
「私、体固いんです」
おそらく7割以上の人がこのワードを言ったことがあるのではないでしょうか。
そして「体が固いとケガしやすい、柔らかいとケガしにくい」
これも多くの人が言ったり、考えたことのある内容ではないでしょうか。
確かに固いよりも柔らかい方がケガはしづらそうですよね。
例えば、転んだときにかかる体への衝撃は固い方が強く受けるでしょうし、柔らかい方が分散されて少ない力で受けれるかと思います。
そうすると体を柔らかくするために何が対策として行われるのでしょうか。
そう、ほとんどの方が「ストレッチ」と考えるのではないでしょうか?
私も子供の頃からケガをしないように体を柔らかくするストレッチをすると教わってきたものです。
しかし、ストレッチを続けて筋肉が伸びるようになったとしてもケガをすることは多くありました。
そうすると「運が悪かった」または「筋力が足りない」なんて言われていました。
ですが今こうやって体や運動に対して勉強をしてみるとそんなことない、と考えるようになりました。
ストレッチが優秀な人でも体を痛めている
私が整形外科に勤めていて遭遇した例で、とてもストレッチが得意で前屈で床にペトってくっついたり、足を左右に開ききったりできる方にお会いしたことがあります。
もちろん1人だけでなく10人以上は記憶にあります。
しかし、そんな方々でも「痛み」や「ケガ」で整形外科にいらっしゃるんです。
肩が痛い
腰が痛い
膝が痛い
しかも年齢も20代、30代のお方です。
我々がよく考えるストレッチで体が柔らかい動きを、とんでもないレベルで行える方でも痛めたり、ケガをします。
中にはジムや運動施設で体を日々動かしたり、鍛えている方もいらっしゃいました。
ここまでくると筋肉の柔軟性、いわゆる筋肉のストレッチができれば体を痛めたり、ケガをしないということはないわけです。
むしろ私の経験上、あんまりにもストレッチが得意な人ほど経過が大変でした。
なぜなのでしょうか?
体が柔らかい動きをできるのと筋肉の柔軟性があるのは別の事
文字通り、体が柔らかい動きができることと筋肉の柔軟性があることは別の事です。
恥ずかしながら、臨床5〜6年目の頃までは同様のことだと考えていました。
体が柔らかい動きができるというのは
- 脳が体の情報を感覚で収集できている
- 体の構造を使いこなしている–骨を活用している
- 1箇所に集中した動きを行わない
- 力に頼らない
一言で言うなら体のコントロールができている状態です。
逆に筋肉の柔軟性があると言うのは
- 筋肉自体の伸張性がある
- コラーゲン繊維の伸張性がある
- 筋肉の滑走ができている
こちらに関しては筋肉自体の性質に関することで筋肉自体がどこまで伸びるかということです。
こうやって分けて考えてみると両者の違いがあることがお分かりいただけると思います。
でも、例えば立って前屈が得意な人はどっちになるの?
こういった疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
よくあるストレッチの前屈ってこういった動きではないでしょうか?
腿(もも)の裏の筋肉(赤線)を伸ばすような動きと言いましょうか。
そのためストレッチの基準で考えると、この図の人は柔軟性がある方と言えるかもしれません。
では次にこちらの図をご覧ください。
先ほどの図と比べると「膝が曲がって」しまってます。
おそらく、この方に対しては「もっと膝を伸ばして!!!」といった注意をされるのではないでしょうか。
しかし、考えてみてほしいのは前屈という動きはどういった動きなのでしょうか。
前屈は背骨の一番下である「仙骨」という骨がお辞儀をして、骨盤が脚の上で前方に傾く動きです。
そのため脚を伸ばしながら支える事と骨盤と背骨(股関節や肩甲骨が関わりますが今回は省略)の関係性が重要な動きです。
そう考えてみると
これは脚で支えれているでしょうか?
背骨と骨盤が協力して動けているでしょうか?
図で見てもそうではないことがわかるのではないでしょうか。
角度を変えてみるとなお分かりやすくなります。
先ほどの図を横にするとこうなります。
いわゆる長座体前屈です。
こうやって見てみると、腿の裏は伸びていますが、骨盤も後に倒れ、下半身が体を支えれていません。
もしこの人が長座をするとしたら膝から下を床の方に押し付けなければいけなくなります。
もっと腿の裏の柔軟性が必要になりそうです。
ではもう片方はどうでしょうか。
膝は曲がっていますが骨盤は立っており、下半身で支えれています。
膝から下を押しつける必要もありませんし、楽に支えれていることが分かります。
つまり後者の方がストレッチの概念で考えると上手くできておらず、体が硬くケガをしやすく痛めやすいという風に捉えられてしまいますが、実際の体のコントロールということに関していえば脚や骨盤が機能し、うまくできていることが分かります。
実際に私が見たストレッチが得意なのに体を痛めた人達の前屈を見たところ「ただ腿の裏が伸びている」だけの方がほとんどでした。
むしろ何か「力」で動かしている感じが強く、触ってみると突っ張っている部位が多かったです。
あとがき
いまだに筋肉を伸張する、という内容が正しいということが出回っているかと思います。
特に先ほどの図の体のコントロールが元々うまくできている人が、その過程を理解せずに「ストレッチがいい」と話している場面が多く見受けられます。
全部が間違っているわけではありません。
伸びることも大切です。
しかし、過程を無視していることに気づかずに努力をして体を壊しやすくなってしまったり、痛めた場合には「ストレッチが足らない」ということを考えてしまう方が本当に多いです。
そんな方に少しでも今回のことが響けば嬉しいなと思います。